018「軽々しく米と比べてはいけない」
LINEに証拠残っちゃってる
パリ:毎度驚きますが、我々の新しい本をまた出してもらえることになりましたね。
ナオ:なりましたよ! パリッコさんの本や私の本をこれまでにもたくさん出してくれている、スタンド・ブックスという出版社から。
パリ:出版界の異端児。いやむしろ、出版界の泥酔児? とにかく普通じゃない。
ナオ:はは。代表の森山さんが酔って出版を決断したのかもしれない。
パリ:「やべ、LINEに証拠残っちゃってるよ……」
ナオ:「うわ、本当に言っちゃってる。夢じゃなかった……」という。
パリ:だけどその結果、なんの役立つ情報もないけれど、とにかくおもしろい気がする本ができました。
ナオ:『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』というタイトルの本で、2022年9月29日に発売されます! 私たちが「酒の穴」というユニット名義でデイリーポータルZに書いてきた記事を加筆修正しつつまとめ直したものです!
パリ:タイトルは収録された記事の一篇からとられたものなんですが、その時点でもう「こいつらやらなくていいことやってるな」とわかる。
ナオ:はは。そうですね。「帰れない一日」ってなんだよ。しかも、誰に言われたわけでもないですからね。自分たちで勝手にそう決めただけで。
パリ:そう。毎回担当編集の古賀さんに「次回、これやりたいんですけど!」と元気に提案。
ナオ:だから「帰れない」じゃなく、正確には「らない」ですよね。
パリ:はは。 「帰らない一日」だと急に駄々っ子感が出る。
ナオ:確かに。「おもちゃ買ってもらえるまで帰らない一日」。
パリ: 「ミュージシャンになるという夢を認めてくれるまで家に帰らない一日」
ナオ:一日でいいんだ! 明日には帰るっていう。
パリ:意思弱い。
ナオ:「温泉に泊まるので帰らない一日」
パリ:それは旅行っていうんですよ。
ナオ:ね。楽しいだけ。
パリ:だいたいまぁ、そんなくだらない内容が、ぎっしりと詰まった本ですね。
ナオ:はい。そういう本です。
パリ:見所としては、デイリーに書いた記事を厳選して、全編加筆修正して、そんで全ページに「副音声」という、振り返り対談を追加収録したんですよね。
ナオ:しましたねー!
パリ:大変だったけど、なので全ページに新しい要素があると。
ナオ:こういうところはパリッコさんのサービス精神というか。「全ページに新しい対談を追加しましょう!」って、大変なこと言い出したなと思ったけど。
パリ:僕が言ったんでしたっけ? 森山さんじゃなかった?
ナオ:いや、パリッコさんが。泥酔してLINEで……かな。
パリ:はは。面目ない。翌朝見返して「夢じゃなかった……」パターンね。
ナオ:でもあれ、すごく楽しかったです。
パリ:ひと晩で一気にやったんですよね。LINEのやりとりで。6時間くらいかかったかな? 途中からハイになってきて楽しかった。
ナオ:ここでの会話とそんなに違わないんだけど、すでに決まっているページ数や文字数になんとなく合わせてやるという。ちょっとスポーツみたいでしたね。雑談のスポーツ。
パリ:そうそう。3時間くらいやったところで「10分休憩しましょう!」つってまたどうでもいい話を始める。
ナオ:はは。まさにプロ。グラウンドで練習したあと、寮にかえってまた素振りしてるような。
雑談の素振り
パリ:よく、自動で返信をしてくれる企業のLINEアカウントってあるじゃないですか。「ご希望のサービスを選択してください」とか。そこに、ずーっと話かけてるみたいなね。
ナオ:ありますね。それがつまり雑談の素振りだ。
パリ:「時間帯変更のご希望ですね?」「時間帯といえばこないだ〜」
ナオ:はは。雑談だから横道にそれていく。「時間帯といえば~」ってその先に何があるんだろう。
パリ:いやでも、けっこう広がる。
ナオ:時間帯と言えばね、パリッコさんって朝方に動き出すでしょう?
パリ:そうそう。
ナオ:私は夜更かし大好き派なんですけど、午前2時ぐらいに缶チューハイをもう1缶あけるのが最高に好きなんです。
パリ: でしょ? 逆に僕は早く寝すぎて、そのくらいの時間に目が覚めて、飲みかけだった缶チューハイの存在に気がつき、飲むことがある。つまり、生活は真逆なのに同じ時間に飲んでるんですよ。
ナオ:はは。
パリ:「時間帯といえば」の、お話でした。
ナオ:こういう仕事をしたいですね。「雑談します」というLINEのサービス。
パリ:あー! それいいですね! 需要ありそう。
ナオ:でも想像したら、けっこう大変かもしれないな。
パリ:たとえばですよ。酔っぱらって人恋しくなったやつが「今から飲まない?」と話しかけてきたりする。そうしたらなんと答えるか。
ナオ:ね。なかなか難しいかもなー。
パリ:いやでも、てきとうでいいんじゃないですか。「え、どこいんの?」「北海道の稚内」「とおい〜!」とか。
ナオ:で、「とおいといえばさ」。
パリ:わはは。話を変えていくのね。
ナオ:そうそう。
パリ:「遠いっていう漢字の成り立ちってさ」
ナオ:すぐ自分のどうでもいいフィールドに持っていく。
パリ:わはは。それでいいなら、いくらでもどうでもいい会話が続くな。
ナオ:そうかもしれないですね。
パリ:「遠いといえばさ、冷蔵庫に缶チューハイ取りにいきたいんだけど、今、それすら遠く感じてて」
ナオ:ははは。横着だなー。
パリ:「寝るか取りにいくか迷ってるんだよね〜」
ナオ:純度の高い雑談だ。
パリ:でもそんな会話でも、ちょっとだけすると、わりと救われたりするかもしれませんよ。孤独な気持ちが。相手が誰かもわからないのに。
ナオ:そうですね!
パリ:あ、いいことに気がついてしまいました! これが、そんな本です!
ナオ:はは。そうそう。本当にそういう感じですよ。純度の高い雑談っていう。
ムシヤフナ
パリ: ちなみにこないだ、サイン本を作りに、ふたりでスタンド・ブックスに行ってきたんですよね。
ナオ:はい! 刷り上がったばかりの本を手に取ることができました。
パリ:ね。朝からおじゃまして、手にとって感動して。
ナオ:「いやーうれしいなー!」とか最初は言ってたんですが、そこから怒涛のサイン本作りが……。
パリ:なんと600冊。夕方くらいには終わるかな? って言ってたのが、11時から昼休憩挟んで、夜の9時までかかりましたね。
ナオ:あんなに長時間に渡ってひとつのことに取り組んだのは久々でした。
パリ:それぞれの既刊本200冊ずつくらいとかも合わせて、お互い800冊ずつくらいサインを書いた。
ナオ:800冊ってすごいですよ!
パリ:最後はへろへろでしたが、いや本当、そんなにも作らせてもらえることはありがたい。
ナオ:どんな好きなお寿司でも800貫は無理でしょう。
パリ:無理ですよ。お米800粒ならどうだろう?
ナオ:800粒ってどれぐらいなんだろう。
パリ:うまく想像できないすね。あ、今調べてみたら、江戸時代から伝わる、「ムシヤフナ=64827」という語呂合わせがあるそうです。それが1升(10合)ぶんの米粒の数なんだって。だから、1合がだいたい6500粒。はは。だから800粒って、1合の1/8くらいだ。
ナオ:そう考えるとちょっとだな。米にはかなわない。
パリ:それこそ大きめの寿司2貫ぶんくらいじゃないすか? ぱくぱくっで終わる。
ナオ:はは。なーんだ、その程度か……。
パリ:あの800冊がこの1皿か……って、もう意味不明。
ナオ:はは。「あれ、なんで米と比べたんだ!?」って。
パリ:「どこでこうなった!?」
ナオ:軽々しく米と比べてはいけない。
パリ:勉強になりました。とにかく、我々にしては近年ないくらいがんばったという話でしたね。「だから買って!」ということではなく、がんばった自慢。
ナオ:そうそう。サイン本はスタンド・ブックスと直取引のある書店などに送られるそうでした!
パリ:もしご興味ある方は、チェックしてみてください!

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