016「駄菓子バトル」
とっくに綱からは落ちている
パリ:もう何年も、TV東京の深夜にやってる「音流〜ONRYU〜」という音楽番組のなかの「酒場サーキット」というコーナーに出させてもらってるんです。メインの内容は、BLUE ENCOUNTという人気バンドのボーカルの田邊さんとゲストミュージシャンの方が、酒場で飲みながらトークをするという。で、僕の役割は、冒頭に登場して、おすすめの酒場を紹介する「酒場監修役」みたいな感じで。
ナオ:ほうほう。
パリ:当然、毎回好きな酒場をきちんと選ばせてもらってるんですが、たまにすごく困っちゃうこともあって。たとえば、こないだスタッフさんから求められた条件が、「ゲストの方がそば通なので、そばが美味しい店で、コロナの関係上、個室があるか、貸切ができるか、営業時間外に撮影ができる店で、しかも、ゲストの方がお酒はワインしか飲めないので、ワインのある店でお願いします」っていう。
ナオ:ははは。なんという難しさ。最終ステージ級。
パリ:もう、ボスが放ってくる弾幕がすごいでしょ。どこにも逃げ場ねー! っていう。
ナオ:というか皮肉ではなく、そのゲストのほうがいい店知ってるでしょ! それだけこだわりがあるんですもん。
パリ:はは。それは絶対にそうなんですよ。でも、僕が紹介するという大前提の設定があるので。あ、これは愚痴とか文句ではなくて、誰しも好みや体質なんかがあるから、いろんな条件が出てくるのは当然なんです。できる限り対応したいし。ただただ、自分の無知さが情けない。
ナオ:そうですよね。「知らないよそんなの!」みたいな感じじゃなくて、本当に「知らなくてすみません……」っていう。
パリ:というか我々、酒場の事情なんかに申し訳ないくらい精通してなさすぎるんですよね。たまにありません? 仕事の依頼で、「こういうお店をご紹介いただきたいです」ってリクエストが来るんだけど、その裏に「多くの酒場に精通されているので、もちろんご存知ですよね?」っていう意図が感じられるような。嫌味っぽいとかじゃなくて、純粋にこちらの知識を信頼しきってくれてる方からの。
ナオ:ああ、確かに。酒場ライターとか、酒好きライターみたいに名乗ってるから、向こうはもちろん「いろいろ詳しいんだろうな」と。
パリ:でもほら、謙遜でもなんでもなく、ぜんぜん詳しくないから。
ナオ:そうなんですよ。「どうしよう……」って感じですよね。
パリ:他のそういうライターさんはもちろん、普通にあちこちの店で飲むのが好きな人ならたいてい、我々よりいろいろ知ってるから。
ナオ:本当に。詳しい人多いですよねー!
パリ:それで前回ちらっと、「そばと酒の店に行った」なんて話をしましたが、もう足で探すしかないなと。それで街に出て、条件に合ってそうなお店を何軒か食べ歩き、最終的に「ここならばっちり!」というお店を見つけられて、紹介できたんですが。
ナオ:いやでも、それは偉い。
パリ:ただそれで、一度行っただけの店を「今回ご紹介するのはですね、僕の大好きな〜」なんて、知ったような顔で紹介するという。まぁ、一度行っただけで大好きになったのは間違いないんですけども。結果、「なんとかクリアー!」っていう。
ナオ:いっつもそうだなー。綱渡りというかね。
パリ:ね。毎回綱渡り。なんとか落ちてないだけですよね。
ナオ:とっくに落ちてるのかもしれない。
パリ:ははは。地面の白線の上を両腕広げて「おっと、よっ」とか言いながら歩いてるだけ。
ナオ:「下からのアングルで、綱渡ってる感じで写真撮ってください!」っていう。
パリ:ははは。その協力者、誰なんだ。
The Fat of the Land
ナオ:言葉は悪いけどごまかしごまかしというか。だから、トリミングって便利ですよね。自分の家のテーブルの上がめちゃくちゃ散らかっていても、きれいなところだけ切りとってさ。
パリ:あ〜もう、仕事の写真なんか毎回それですよ! あの、有名な風刺画で……。
ナオ:あー! わかります。ここを切り取るとこういう風に見えるみたいなやつですよね。
パリ:これ。
ナオ:そうそう! これこれ。
パリ:いやあの、すいません。言いかけたのはすごく関係ない話で、この絵、よくできた風刺画だなと思うんです。と同時に、見るたび毎回、「それにしても靴、とんがってるな〜」とも思うんですよね。
ナオ:ははは。確かに。風刺したいがゆえに、なんかそっちに寄せすぎという。
パリ:すごく考えさせられる絵ではあるんだけど、それはそれとして気になる。
ナオ:「こんなに後ろ足あがる!?」みたいな。
パリ:はは。よくみたら左の人の走りかたにも違和感あるな。右手と右足が同時に出ている?
ナオ:見れば見るほど、なんか変だ。……というこの風刺画もまた、なにかを言おうとしているひとつのメディアであるという風刺なのかな。
パリ:はは。で、ぐーっとカメラが引いていって、この絵を見ている我々の後ろ姿が写って「It's Sakenoana」。
ナオ:はは。一番愚かなやつら。
パリ:すいません、脱線しましたが、トリミングが便利というのはゆるぎない事実で。
ナオ:たとえば仕事じゃなくても、なんか習慣で、お店で食べたものをスマホで撮っておきたいみたいなことありますよね。
パリ:はい。
ナオ:思い出にもなるし、後でブログの日記にでもあげるかもしれないしって撮ってるけど、たまにうっかり半分食べてしまったみたいなことありません? そういうとき、めっちゃ寄って撮る。
パリ:はは! わかる。
ナオ:不自然なほどにメシとの距離が近い。
パリ:それこそ、仕事でそういうミスしたときは焦りますよね。ゆるいメディアなら、必殺! 「あまりにも美味しそうで、写真を撮る前に半分食べてしまいました〜!」でいけることもあるけど。
ナオ:はは。必殺! っていうか、半分食べるまで気づかないのおもしろいですよね。もう無我夢中っていう。
パリ:酔ってるとなおさら。
ナオ:「あっ! 食べちゃった」じゃねーよ!
パリ:我ながら、こんなに欲望に忠実な仕事中の人はなかなかいないですよ。
ナオ:めちゃくちゃ人間らしいですけどね。「うまそー! パクパク! ……あっ!」って。
パリ:思い返せばそんなんばっかりだわ。
ナオ:昔、友達が「最近気になる女の子がいて、連絡とってるんだけど」「お、そうなんだ。いいねー」なんつって話を聞いていたら、「ただひとつだけ気になるのが、『今日はイタリアンのお店でパスタを食べたよー!』って送られてくる写真が、いっつも食べかけなんだよな」って言ってて。
パリ:わはは。
ナオ:送られてきた写真見せてもらったんですけど、食べかけっていうか、もう食べ終わりなの。
パリ:いい人そうではある。
ナオ:まあね。よっぽど美味しかったんだなっていう。逆にそのタイミングまできて撮ろうと思ったのがおもしろい。
パリ:その人なりの美味しかった表現なのかもしれない。
ナオ:あー! なるほど。「ペロリと平らげてしまいましたよ!」と。
パリ:空の皿だと何が入ってたかわかんないから、わかるだけ残した状態で。
ナオ:「こんなものが、これの10倍もあったんですよー!」ってね。「想像してごらん?」。
パリ:ははは。
ナオ:もしそれが仕事だったらどうしますか? 9割食べてしまった後に「やべえ、写真忘れた!」ってなったら。
パリ:もう、The Prodigyのカニジャケのアルバム(『The Fat of the Land』)みたいに、ズームぼかしみたいの使って、「すごい勢いでパスタを食べた記憶」っていうタイトルの1枚にするかな。
ナオ:ははは。あのジャケね、夢の一場面みたいな。それしかないですね。そこにもう、自分の美味しそうな顔もぼやっと入れて、「こいつが食べました!」と。
パリ:そう考えてみるといろいろありそうだ。原型があったと思われる料理の形に点線を入れて、「最初はこんなにありました」っていうのはどうでしょう?
ナオ:はは。チーズをネズミがかじって持ってったみたいな。
こんぺいとうはまきびしだし
ナオ:そんな状態でも、プロのカメラマンだったらうまく撮れたりするんですかね?
パリ:プロはすごいですからね! たとえば、お店の人に照明を落としてもらって、ものすごいピンポイントのスポットライトを残ってる部分にあてて、陰影で美味しそうに見せたりするかも。
ナオ:あー! そういうこともできるんだ、照明の力で。
パリ:無理があるかなぁ……。
ナオ:でもそういうことですよね。プロというのは。
パリ:「この真っ暗な部分に、続きあるんだろうな」って想像させる。
ナオ:さっきの点線理論にも近い。じゃあ、「プリッツ」が最後の1本だけ残った状態で気づいたらどうしますか?
パリ:それも逆転の発想で、皿の横にあえて、吸い殻の入った灰皿とかを無造作に置いて、そういうコンセプトに見せればあるいは?
ナオ:はは。
パリ:ストーリーで魅せる……っていうか、思ったんですが、プリッツはまた買ってくればいい。
ナオ:はは。確かに。サボりすぎてたわ。
パリ:家でプリッツ撮影してて「あ、食べちゃった!」じゃないだろうと。「コンビニ行くのだり〜な〜」つって。
ナオ:100本入りだとして、99本食べちゃってますからね。
パリ:気づくの遅すぎ。
ナオ:さすがにね。でもプリッツってうまいんですよねー! 特にトマト味。たまらん。
パリ:出た! 「じゃないほう」理論! プリッツなんて前回いつ食ったか……子供のころかも知らん。
ナオ:本当に申し訳ないのですが、今、パリッコさんをプリッツでぶちたいです。
パリ:わはは。痛くなさそう。
ナオ:痛くはないと思うのでせめてぶちたい。
パリ:ナオさんがそうくるなら、仕返しに「キャベツ太郎」でグシャッ! ですよ。
ナオ:はは。「やったなー! このー!」って。じゃあ私は、ポテチをメンコみたいにして本気でエイッ!
パリ:ならば、こっちは、「蒲焼さん太郎」をほっぺにピタン!
ナオ:うわ、嫌な攻撃!
パリ:あまり痛くはないだろうけど、タレがね。
ナオ:駄菓子バトル。じゃあ、吹き矢の要領で、パイプみたいなものから「うまい棒」発射!
パリ:はは。いやいや、中心に穴空いてるから、あんま飛ばないじゃないかな〜。
ナオ:そうか! 穴の存在、忘れてたわ。
パリ:純粋に「さくら大根」を1枚、相手の口にねじこむのが最強かもしれない。強烈にすっぱいから。
ナオ:ははは。強い! でも、さくら大根はあれ、駄菓子のふりした料理だよね。
パリ:しまった。じゃあ、粉末ジュース! 目つぶしに。
ナオ:たしかに。砂と同じように使える。
パリ:こんぺいとうはまきびしだし。
ナオ:麩菓子でできた橋を渡らせて、川にドボーン!
パリ:はは。罠だ。木っぽいからねあれ。
ナオ:そうそう。
パリ:そして最後は「こんなのはも〜こりごり! お菓子はやっぱり、食べるのがいちばん!」で、ハッピーエンドですね。
ナオ:「みんなもお菓子で戦うのはやめて、食べよう!」っていう、まぬけな戦い。
パリ:なんの教訓にもなってないもんな。
ナオ:まったくです。
【ゆる募】
このブログで酒の穴のふたりに話してもらいたいテーマをゆる募します。ふたりへの質問や、身の上相談、最近気に入っている飲みかた、酒、つまみの話、ぜんぜん関係ないけど聞いてほしいご自身の話など、なんでもOK! こちらのメールアドレス、または、以下のふたりのTwitterアカウントへのリプライなどで、お気軽にお寄せください。
・パリッコ


コメント
コメントを投稿