014「愛とフュージョン」
Dear My Friend
パリ:もうずっと昔から思っている、「J-POP極悪非道だと思う歌詞ベスト3」というのがあるんですよ。
ナオ:極悪非道ですか。どんなだろう。
パリ:「慈悲はないのかよ?」っていう。ひとつめはEvery Little Thingの「Dear My Friend」なんですけど。
ナオ:ヒット曲ですよね。どんなだっけ。
パリ:「いつか最高の自分に 生まれ変われる日が来るよ♪」っていう
ナオ:あー! はいはい!
パリ:そのポジティブなサビへの導入の部分なんですが、
口紅ぐらいはしたけど
「綺麗になったね」突然
どうしたのかな 冗談だよね
マジな顔はあなたに似合わない
パリ:っていう。ぜんぜん向き合ってくれないんですよ。
ナオ:ははは。そこからあのサビですか。
パリ:そうそう。
いつか 最高の自分に
生まれ変われる日が来るよ
もっと まっすぐな気持ちに
出会えると信じてる
Best Of My Friends
パリ:少しでいいから向き合ってやれよと。
ナオ:あら! つまりもしかしたら相手には恋心があるのかもしれないのか。
パリ:あ、そうそう。完全にそうなんです。
ナオ:しかし「冗談でしょ?」と。
パリ:冗談じゃないんだよこっちは。
ナオ:そう考えると「いつか最高の自分に 生まれ変われる日が来るよ♪」って、いよいよ謎だ。
パリ:もうね、てきとうなんですよ。
ナオ:はは。なんか急ですもんね。ちなみに今、唐突に思い出したんですけど、一時期、友達と朝まで酒を飲んでは酩酊状態で、その場にいないやつに電話して「いつか最高の自分に 生まれ変われる日が来るよ♪」って、この曲のサビを何度も繰り返し歌うっていうのが仲間うちでブームになった。
パリ:わはは! 流行ったからね。
ナオ:早朝で、相手が電話に出てもすぐ切られる。でも留守電に入れたりして。
パリ:迷惑極まりない。
ナオ:最低の自分でした。
パリ:でもそういう、謎のパワーがあるサビなんですよね。ところが導入部はこうだった。「マジな顔が似合わない」っていうのも失礼千万じゃないですか。ずっとヘラヘラしてろってことか! っていう。
ナオ:確かに。笑ってるばかりのやつだと思われてる。
パリ:そんでこの女きっと、ぽっと出の、大学のサークルで出会った男とくっついたりするんですよ。っていうか後半、もう、言っちゃってるんですよね
そう お互いに恋心抱くよりも
解り合える 語り合える
いつまでもそんな仲でいたいよ
パリ:勝手か!
ナオ:ははは。そうかー! なるほど、もう完全にこれはそういうことなんですね。「私に恋心をいだかないでね」っていう。
パリ:恋心厳禁。そういう意味での、タイトル「Best Of My Friends」なんですよ。すげーテーマだなと。
ナオ:そう考えると、こう言われてる相手には酷だよなー。
パリ:酷すぎる。
ナオ:酷すぎるゆえに歌で伝えたのかも。
パリ:はは。これが手紙だったらやばい。メロディーにのってるからなんとか受け止められる。
ナオ:でももしかして、このふたりには、なんかほんの少し一線を超える出来事がすでにあったとか?
パリ:あ〜……あれ? 「ひどい!」っていう感情が優先しちゃって、きちんと歌詞を読みこんでいなかったのかも。序盤に、
いつしか あなたと二人で
会う機会多くなってた
あの時のような気楽な気持ち
どこかに忘れてしまったよね
パリ:ってある!
ナオ:あら! じゃあこの語り手もまた、恋心を抱きはじめてしまっていた……。
パリ:近づきかけたんだけど、「違うな」と思ったということなのかな。
ナオ:恋をするということは友達としてのあなたを失うことでもあるわけですもんね。それにしても「どうしたのかな 冗談だよね」はちょっとひどいんだよな。
パリ:ひどい。だけどそれも強がりなのかな? もしかして。
ナオ:そうそう! そうやって「ハハハ! もうー!」みたいにあえて茶化すようなね。そういうのある。
パリ:うん。すいません。自分の曲への理解が足りてなかっただけなのかも……。
ナオ:なんなら実は、語り手のほうがものすごく相手を好きになってしまっていたとしたら、これは辛い歌ですね。
パリ:うおー、すみません! 当時からみんな、それういう深みをちゃんとわかって聴いてたんだな。自分だけが「非道!」とか言って。
ナオ:いや、私は歌詞自体まったくちゃんと読んでなかったです。サビ以外の記憶がない!
パリ:ナオさん、今回のあと2曲、そうやって僕を正してもらえませんか?
ナオ:そんなそんな。でも楽しみです。
ひとり
パリ:次こそはもう言い逃れできないんじゃないかと思うんですけど、ゴスペラーズの「ひとり」という曲の冒頭。
「愛してる」って最近言わなくなったのは
本当にあなたを愛し始めたから
パリ:こ〜れ〜は〜さすがにじゃないですか? きれいな声でハモリながらさ。
ナオ:はは。確かに。じゃあ最初のころに言ってた「愛してる」ってなんだったのっていう。
パリ:あーでも……今歌詞をトータルで読んでみて、もう自分の気持ちが揺らぎはじめてます。最後のところが意味深なんだよな。
ナオ:おお。そうなんですか。
前に恋してたあなたとは
今はもう別の人だね
こんなに静かに激しく
あなたのこと愛してる
ナオ:えー! どういうことだ。
パリ:ベタに考えると、恋が愛になったとか?
ナオ:割とライトな段階からギアが上がったように関係が深まったと。
パリ:愛になったから、愛という言葉を使わなくなった?
ナオ:それこそあれか、合コンで知り合って最初は「まあ、お互い顔が好みだったんすよー」みたいに付き合った感じで。
パリ:はは。その場で「みんな聞いてくださ〜い! おれ、こいつ愛してま〜す!」って。
ナオ:もう簡単に言えてしまうような。それが相手を知っていって、どんどん好きになり、「ずっと一緒にいたいかもしれん!」みたいなことか。
不思議な気持ちさ
別の夢追いかけたあなたが
今僕のそばにいるなんて
うたがってた三月
涙が急にこぼれた
許し始めた五月
わだかまりも夏に溶けてく
パリ:これ、4月になんかあったっぽい。
ナオ:あ、そうなんだ。それだとまた話が変わってくるぞ。「うたがってた」というからには、なにか嫉妬するようなことがあったんですかね。「別の夢追いかけたあなた」か……。
パリ:ね。たとえば海外留学すると聞いて、実は海外に恋人ができたんじゃないかと疑ってたとか? 歌詞って基本的に抽象的だからわかんないんだよな〜。
ナオ:彼女が最近やけにテニススクールによく行っていて、そこに石黒賢みたいなイケメンコーチが。
パリ:石黒賢が「お前、見込みあるぞ。一緒に海外で夢をみないか!?」って。それは疑う気持ちわかる。
ナオ:はは。石黒賢は疑うかもなー! 「そのスクールだけはやめてくれ!」とか言ってしまって。
パリ:石黒賢の見た目がもうね。
ナオ:かっこいいからなー。絵に描いたようなテニスコーチでさ。
パリ:一方の主人公の苗字はなんだろう、
ナオ:「鈴木」じゃないですか。
パリ:はは。もしくは「小林」(パリッコの本名)か。どっちにせよかなわない。
ナオ:「石黒賢」って名前として良すぎる。
パリ:レ点を入れると、賢き黒き石。
ナオ:もうなんか、秘宝みたいな。
パリ:でもさ、その石黒賢の誘いを断って、最後はこいつといることに決めたんですよ……彼女は。そりゃあわだかまりも夏に溶けてくわ。いやでも待って、それを鑑みて、
「愛してる」って最近言わなくなったのは
本当にあなたを愛し始めたから
パリ:この歌詞をふり返っても、「愛してる」は言ってもいい気しますけどね。
ナオ:愛してるなら言っておいたほうがいい。
パリ:ね。でも、僕が簡単に憤慨していいほど単純な話ではなかったんだな。
ナオ:確かに本当にうまいとき「うまい!」とか言わないですもんね。顔も美味しそうにしたりしないでしょ。もう怖いぐらい真顔で食ってるじゃないですか。
パリ:はは。
ナオ:そういうときが本当にうまいときだっていう。
パリ:そうなのかもな〜。「う、うますぎてなんも言えね〜!」みたいな。
ナオ:うまさそのものになってる状態というかね。フュージョン状態。
パリ:愛とフュージョンしてたわけなんですね。
ナオ:そうなんですよ。鈴木がね。まあ小林でもいいんですが。
パリ:神様が山頂からご来光を見ても、「神々しい……」とか言わないですもんね。きっと。
ナオ:そうですね。石黒賢は石黒賢をイケメンと思わないし。
パリ:はは。石黒賢は「どうも、石黒です」じゃなく「どうも、ボクです」って言いそうだもんな。
ナオ:ちなみに今、普通に石黒賢のインスタを見ちゃってました。そして愛しはじめている。
パリ:ははは。見よう。え! 若返ってない?
ナオ:はは! でも確かになんか若いっすね。ただ、少し尖ったイケメン感が消えて、なんか優しそうな雰囲気になっている。
パリ:確かに。ちょっとおちゃめさある。
ナオ:一緒に酒飲んでくれそうな雰囲気に。
パリ:いいな〜石黒賢。インスタ初投稿のセーターが最高すぎます。
https://www.instagram.com/p/BrMtn9hlbyO/
ナオ:はは。テニス! テニスコートそのものになってる! まさにフュージョン状態。
もう恋なんてしない
パリ:話がだいぶ脱石しましたが、最後にもう1曲、槇原敬之の「もう恋なんてしない」はご存知ですよね?
ナオ:もちろんです!
パリ:こればっかりはさすがに言語道断だと思うんです。
君がいないと 何も できないわけじゃないと
ヤカンを火にかけたけど 紅茶のありかがわからない
ほら朝食も作れたもんね だけどあまりおいしくない
君が作ったのなら文句も 思いきり言えたのに
ナオ:あらー! 文句言っちゃうのかー。
パリ:だからふられたんだろ! と。しかも自分の料理がまずくて、架空の文句を言ってる。
ナオ:はは。「自分の作ったこのまずい料理がもし君の作ったものだったら文句言えたのに」っていうことですもんね。それはいかん!
パリ:そうそう。しかも「思いきり」。
ナオ:思いきり! 実際、どれぐらいでしょうね。
パリ:想像したくもないほどです。
ナオ:「なんじゃこら! ゴミかと思ったわ!」
パリ:はは! ひどい!
ナオ:「まあ、ゴミにしては美味しいけどよ!」
パリ:その優しさが逆にこわいよ。どういうやつなんだ。で、
さよならと言った君の
気持ちはわからないけど
パリ:だもん。わかれよ!
ナオ:そうだなー。原因はたくさんありそうだ。
パリ:まーでも、あえてそうやって、若さを描いた歌詞なのかもしれない。あの槇原さんですもんね。
ナオ:うんうん。
パリ:あともう、このくらいの天才になると、歌詞なんて音とかイメージなのかもしれないというのもある。桑田佳祐とか、井上陽水とか。
ナオ:確かに、めっちゃドキッとする歌詞ですよね「もう恋なんてしないなんて 言わないよ絶対」って。ドキッとするような言葉が連なっていって、最後までどうなるかわかんない。うますぎる。
パリ:めちゃくちゃ気持ちいいし。
ナオ:今歌詞をちゃんとぜんぶ読んでいるんですが、最後なんて、
本当に本当に君が大好きだったから
もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対
ナオ:心から好きだったからこそ、もっといい恋を見つけるんだという。
パリ:しかもそれが「もし君に一つだけ 強がりを言えるのなら」から繋がってますからね。強がりなんですよね。本当の気持ちは、「もう恋なんてしない」なんですよ。
ナオ:ぐおー。そうだ。だから思いきり言いたい料理への文句もまた、強がりなんだ。
パリ:言えないからこそ、そう言ってるのか。
ナオ:たとえばだから、言ったとしても「こんなにぎょうさん油つかって、早死にさせるつもりやろ! うまいけど!」みたいな文句なんじゃないの。
パリ:はは。大阪の熟年夫婦。で、実際作ってもらったら、文句なんて言わないんですよこいつは。
ナオ:そうそう。強がっているんだわ。
パリ:ね。ぜんぶ強がりなんだ。
ナオ:そう思うと、なんともやはり繊細な歌詞に思えますね。
パリ:本当です。自分がおろかだった。
ナオ:有名な曲の歌詞をちゃんと読むの、おもしろいですね! あの、ぜんぜんしょうもない話なんですけど、最近ウルフルズの「ええねん」っていう曲がなぜかよく脳裏をよぎって、それが「酒を飲んでもええねん!」みたいに、自分を許すときに頭のなかで流れる。
パリ:はは! 都合のいい歌詞で歌っちゃうっていうね。
ナオ:「寝起き飲んでもええねん!」とか。さらにバックコーラスで「ええねん!」って頭のなかで言ってくれるから。
パリ:「食いたきゃ食えばええねん!」
ナオ:「仕事せんでもええねん!」
パリ:「やなら寝てたらええねん!」「ええねん!」
ナオ:はは。歌っていいなー。いやまぁ、実際そんな意味の歌じゃないんでしょうけどね。
パリ:どういう歌だったろう。
ナオ:今、調べてみたけど、どっちかっていうと「不器用でもがんばればええねん!」的なメッセージっぽい。
パリ:そりゃそうだ。
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