005「ドライはつらいよ」
嬉死
パリ:長引いた緊急事態宣言が、この10月1日、いよいよ全国的に明けましたね。
ナオ:はい。すごくようやくという感じがありました。
パリ:とりあえず繁華街を歩いてみたら、お店の人もそこで飲んでる人もみんな笑顔で、なんかキラキラしてました。
ナオ:私は近所の天満を少し歩いたぐらいなのですが、やっぱり明るい雰囲気ですか!
パリ:いやもうね、実在しないイルミネーションがピカピカ点灯してるような感じ。クリスマスみたいな。僕の脳みそがお花畑なだけかもしれませんが。
ナオ:はは。いやいや、飲む側もお店の側もこの日を待ち望んでいたでしょう。
パリ:昨日、ちらりと寄った好きな店の店主さんが言ってたんですが、解除前日あたり、地元の八百屋とかの商店もいつも以上に混んでて、大量に買って帰る人がたくさんいたらしくて、「あれはきっとお店やってる人たちだろう」と。だから、飲食店だけじゃなく、いろんな人がその活気に喜んでる感じがあって。
ナオ:なるほど、一気にあちこちに血が通いだすというか。
パリ:ね! 酒屋さんなんかもう、大忙しでしょきっと。
ナオ:少しでもこの休まなきゃいけなかった間のぶんを取り戻してほしいですね。10月1日にね、それこそ何度も取材でお世話になって、という以前に普通にいちばんよく行く店である天満の「但馬屋」という居酒屋に行ったんです。
パリ:おお、羨ましい!
ナオ:で、その時、ちょうど近くに用事で来ていたライターの泡☆盛子さんと、ほんの少し乾杯したんですが、泡さん、どて焼き食べて泣いてましたよ。
パリ:わはは! わかるな〜。
ナオ:人が作った料理ってこんなだった……って。
パリ: 泡さんはかなり長い期間、ものすごくきちんと自制してたみたいですもんね。
ナオ:そうですね。居酒屋で飲むのは相当久々だったようで。但馬屋のどて焼きはわりとオーソドックスなものなんだけど、感動されていました。
パリ:僕が但馬屋へ行くと必ず頼む、名物の「キムチ天」は食べたんですか?
ナオ:いや、どて焼き、梅くらげぐらいを頼んで、軽く飲んでサッと去った感じです。
パリ:はは。慣らし運転みたいな。徐々に徐々にですね。
ナオ:そう言われるとそうかも。急に思いっきり投げたら肩壊すでしょう。
パリ:そうそう。前から思ってることがあるんだけど、本当の意味でコロナが落ち着いて、たとえばついに大宴会ができたとするじゃないですか? そこで僕、「嬉し死」する気がするんです。
ナオ:はは。なんて読むの「うれしし」でいいのかな。
パリ:はい。
ナオ:もう「嬉死」と書いて「うれし」でいいですね。
パリ:嬉死。せっかくなんとかそこまでがんばったのに、そこで死んじゃうっていう。
ナオ:むしろ、本人はいいけど参加メンバーは大変ですよ。「うわ、どうする? 遺体」つって。
パリ:「まぁ、とりあえずラストオーダーのあとで考えようか?」
ナオ:はは。パリッコさんは死んでるけど宴会は続行されるんですね。まあそのほうがありがたいですよね。
パリ:そのラストオーダーで、念のため多めに頼む人とか普通にいて。
ナオ:ははは。「えーと、ビールのピッチャー……4つで!」って。
パリ:そのピッチャー、ふざけて頭の周りに並べられてね。「おそなえ!」「ぎゃはは!」っつー。
ナオ:もうみんな酔ってるから。死んだパリッコさんを無理矢理椅子に座らせて「はい、チェアリングー!」「ぎゃはは!」みたいな。
パリ:なんだかそれがいちばん幸せな死にかたな気がしてきました。
ナオ:確かに。最後、みんなで記念写真パシャリ。
スーパーチューハイ
パリ:ちなみに僕の緊急事態宣言明けの外飲み1杯め、ナオさんとは対照的にけっこうハードでしたよ。
ナオ:おお、どんなふうでしたか?
パリ:そもそも10月1日、東京方面に台風が接近してて、日中はすごい暴風雨だったんですよ。だけどどうしても、家から自転車で15分くらいかかる上石神井という街に行かなきゃいけない用事があって。上下レインスーツに帽子かぶって、フル装備で出かけたんですね。で、用事がすんだのが昼すぎで。もう、全身ビショ濡れで、体もすごい冷えてきて。
ナオ:そこまでの状態だったんだ。
パリ:それでも、「どっかで飲まなきゃ!」と。
ナオ:いやいや、「飲まなきゃ!」じゃないですけどね。
パリ:ね。またいつもの「そこまでして飲みたいの?」ですよ。
ナオ:まぁ確かに、少しでも飲んで帰りたいという気持ちになるのはわかります。
パリ:ただ、あれこれ店をどこにするか悩んでる余裕はない。そしたら、帰り道に「ぎょうざの満州」があって、逃げこむように入ったんです。さすがの天気なので、先客ふたりくらいのガラーンとした店内で、窓の外の暴風雨を眺めながら、餃子&ライスを頼んで、それをつまみに生ビールを黙々と。
ナオ:すごいシチュエーション。
パリ:ただ、これがもう、どうにかなるくらいうまかったんです!
ナオ:必死の形相で現れたびしょ濡れの客が、死ぬほどうまそうにビールを飲んでいたんですね。
パリ:そう。「ふぅ……ふぅ……」って言いながら。「出所したて?」っていう。
ナオ:お店の人も「そこまでして飲みたいの?」と思ったでしょうね。
パリ:たぶん引いてましたよ。あ、一応体は拭いて入ったけど。
ナオ:でも、気持ちはもちろんわかります。
パリ:だって、飲みたいもんやっぱりその日。もはや儀式ですよね。
ナオ:お神酒というかね。「とりあえず元気でここまで生きられました。ありがとうございます!」という意味の酒。それにしてもさ、最近お店で飲むのに慣れてないから、飲むペースがわかんなくて困りません?
パリ:そうなんですよね。ビールぐいぐいいっちゃって。
ナオ:餃子とビールのバランス困りませんでしたか?
パリ:はい。でもそこはもう、「スーパーチューハイ」を追加してカバーしました。
ナオ:ははは。スーパーチューハイってなんですか?
パリ:あ、満洲オリジナルのレモンサワーみたいなやつですね。
ドライ&ウェット
ナオ:なんかそういう名前っててきとうで笑えますよね。僕がたまにコンビニで買うサントリーのチューハイで、「スーパーチューハイ クリスタルドライ」っていうのがあるんですけど、ずいぶん大げさだなと思って。
パリ:はは。ゲームにに出てくるレアアイテムみたいな。
ナオ:「クリスタル」なんて、かなり自信がないと言えないでしょ。もう、必殺技の名前の後に「ドライ」をつけたらなんでも成立しそう。
パリ:はいはい。「ソニックブーム ドライ」。
ナオ:ありそうだな。「ダークネスムーンブレイク ドライ」。これは今、仮面ライダーの技を検索しました。
パリ:大人っぽい味がしそうで惹かれますね。
ナオ:「ナギナタ無双スライサー ドライ」
パリ:あ、それは日本酒使ってるな。
ナオ:はは。本当だ。これは使ってるわ。「ドライ」って便利ですね。というか我々って「ドライ」という言葉だけで美味しそうと思っちゃってません?
パリ:わかる。「ドライ」なら間違いない。
ナオ:ビールの「スーパードライ」のおかげなのかなー。
パリ:スーパードライってすごいネーミングだな! よく考えると。
ナオ:「超乾燥」ってこと? いや、乾燥って意味だけでもないのか。
パリ:辞書をひいてみると、「1 乾燥した。かわいた。2 物事を割り切ったさま。情にほだされないさま」だって。どっちかというと、2ですかね、酒の場合。
ナオ:後味がキリッとしてるみたいなね。「あばよ!」ってすっきり去っていくような後味。
パリ:ストロングゼロも、ドライがいちばん情にほだされなさそうですよね。トリプルピーチなんかもう、他人に甘々でしょう。
ナオ:ああ、そうか。酒だけはドライなやつのほうがいいわ。「スーパードライ」なんてたとえば、一緒に山に登って下山してきたと思ったらそこで「じゃ、帰りますわ」っていう感じのやつでしょ。
パリ:はは! 昔、松ちゃん(松本人志)のコントで、みんなでスカイダイビングやって、最初に着地した板尾が、先に家に帰ってる、みたいなのあった気がする。
ナオ:そうそう! 「古賀」っていうコント。「ビジュアルバム」のなかのね。
パリ:「え? 地上着いたから帰ったんだけど」っていう。スーパードライはそのレベルですよね。
ナオ:ははは。まさにスーパードライ。
パリ:「ストロングゼロドライ」は、もうちょっとだけ話通じそうな気がします。
ナオ:そうですね。「1杯だけ、駅前でなら」みたいな。
パリ:はは。そして「タカラ焼酎ハイボールドライ」は、なんだかんだ3杯は付き合ってくれそうだな〜。
ナオ:だから好きなんだよな。あいつが。
パリ:そうそう。
ナオ:というか我々は、いつも去られる側なんですね。めんどくさがられてるっていう。
パリ:わはは。ドライ側になりたい。
ナオ:1回やってみたいですね、ドライな会。酒の穴で集まって、さっと対談だけして「じゃ、帰りますわ」って。
パリ:ドライだな〜! お互いスーって東京と大阪に。
ナオ:はは。拷問ですね。「家につくまで飲んじゃだめ」っていう。
パリ:金でももらわなきゃやってらんない。
ナオ:ドライ、つらいわ。我々、ドライな酒を好むウェット野郎ですよ。スーパーウェットです。
パリ:いや、でもウェットだからこそ、こうして酒場で飲めるのをしみじみ喜べたりするわけですよね? って、急にきれいにまとめてみたり。
ナオ:でも本当にそう。どて焼き食べただけで目がウェットになる泡さんのように。
パリ:素敵ですよ。
ナオ:それこそ素敵ですよね。
パリ:っていうかおれなんか、全身びしょ濡れで餃子&ビールでしたからね。
ナオ:ははは。ウェットの化身。濡れてるのにそこからさらに水分を取りこもうっていうんですからね。
パリ:芯からウェットなんすよね。ドライはまぁ、あこがれにとどめておきましょう。
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