002「ぬくもり」
酒のない悲しさ
ナオ:最近、ちょっと悲しかった酒の話がひとつあります。
パリ:どんなでしょう?
ナオ:この前、大阪でデイリーポータルZの林雄司さんが出演されるトークイベントがあって、会場で見ることもできるとのことで行ってきたんです。梅田近くにある、ラテラルという会場で、メニューにホッピーセットなんかもあって。
パリ:楽しそう〜。
ナオ:ね。それで、久々にホッピーセットを頼んで、飲みつつ楽しいトークを聞いてたんです。で、後半ぐらいのところでホッピーのナカをおかわりしようと思って。
パリ:ホッピーといえばナカですよ。
ナオ:その会場、スマホでQRコードを読みとってオンラインで注文するシステムだったんですね。
パリ:ありますね、最近。
ナオ:私のスマホがポンコツでネットにうまく繋がらなくてちょっと手間どっちゃって、そうこうしているうちに酒類提供のデッドの19時をちょっと過ぎてしまい、なんと酒のオーダーができなくなって……。
パリ:わー、なんとかなりませんでしたか?
ナオ:はい。イベント中だったのでちょっと言い出せず。ソトだけで飲みました。19時に引き裂かれたナカとソト。
パリ:わはは。いや、僕らから言わせると、酒類の提供が19時までというのはしかたないとして、ナカだけは例外と認めてほしいですよね。
ナオ:はは。唯一の例外。
パリ:だって、セットは頼んでるんですもんね。絶対にナカは必要になるんだから。
ナオ:そうなんです。まぁ、悪いのは私なんですが。
パリ:酒のない悲しさといえば、最近、酒を提供できない地元の酒場が、それでもなんとかがんばろうとランチ営業を始めたりしてて、応援の意味もこめて、あちこち行ってみてるんです。
ナオ:うんうん。
パリ:たとえば石神井公園の「とおるちゃん」という店。そこの「イベリコ豚のとろとろチャーシュー」っておつまみが大好きなんですよ。
ナオ:うまそうですねー!
パリ:タレが甘めで、それがとろとろの豚肉とあいまって、たまらないんです。で、現在、それがこうですよ!
ナオ:はは。そうか、定食化するわけだ。手と足がジャキーンと伸びて完成形ロボになる感じ。
パリ:そうそう。しかも、そもそもチャーシューの単品が1000円くらいとお店のなかでもけっこうな高級品なんですけど、この定食全部で1000円なの!
ナオ:安い!
パリ:これがですね、今まで飲みながらだったから、しっかりご飯と一緒に食べると、あらためて信じられないくらいうまいんです。
ナオ:なるほどな。
パリ:魚もうまい店なんで、みそ汁も具沢山のあら汁で、サラダには角切りの生ハムがごろごろのってるし、今までこんなに美味しいものを何気なく食べてたんだな〜って。
ナオ:あらためて気づけたんだ。
パリ:そうなんすよね。今までは「チャーシューうめー」と「酒うめー」に分散されてたから。ただ、これらをですね、ジョッキに入った冷水をおともに食べるわけですが、そこがやっぱりちょっと、悲しいんですよね〜……。
ナオ:これ、チューハイじゃないんすか?
パリ:真水です。
ナオ:はは。真の水。
パリ:結果、“うま切ない”という謎の感情が。
ナオ:これはうま切ない。
またしても銭湯の話を
ナオ:何度か行ったことのあるスーパー銭湯があって、雑魚寝スペースがあり、漫画読み放題コーナーがあり、いつも半日ぐらいはダラダラ過ごすんです。ただ今は、食堂は営業してるけど酒類はなくて、そうするともう、時間が長すぎて……。
パリ:わかる〜!
ナオ:逆に地獄みたいな。
パリ:はは。拘束されてる気分。そういうとき、いったん外に出て缶チューハイの1缶でも飲んできていいなら、戻ってごろ寝するんすよね。
ナオ:そうそう。ただただ横になってみてもそんなにずっとは寝られないんですよ。
パリ:風呂あがりに一杯やってからうとうとするのが天国なんすよね! いろんなものがリセットされる。そういえばこないだとある銭湯に、そこは普通の銭湯なので、夕方にひとっ風呂浴びるだけくらいのつもりで行ったんです。そこの親父さん、すごい愛想良くて、行くと「ゆっくりあったまってってね〜」とか、風呂あがりも「お湯加減どうでした?」みたいな感じなんす。
ナオ:街の気さくな銭湯って感じですね。
パリ:で、思ってもみなかったんだけど、そこは宣言中でも普通に酒売ってたんです。
ナオ:へー! 飲食店とは別の扱いになるんですかね。コンビニで売ってるのと同じというか。
パリ:ですかね。でもまぁ、最近は銭湯でも酒の提供停止してるとこが多いですけど。
ナオ:うんうん。
パリ:で、キンキンの宝焼酎ハイボールがあって!
ナオ:わー!
パリ:で、飲んだら、もう、ふわ〜っと、最高の気分ですよ。その瞬間に親父さんが、「風呂上がりの一杯は格別だよね〜」って声かけてくれたんすけど、こっちはちょっとだけ後ろめたいような妙な気持ちもあったので、「は、はい。今、お店で飲めないのでびっくりしてしまって……つい一杯……」とか、聞かれてないことを。
ナオ:ははは。釈明を。
パリ:そしたら親父さんが「いやいや、こういう楽しみがないと生きてる意味ないもんね!」って、すごいズバッと。なんか救われたなと感じた瞬間でした。
ナオ:本当ですね。気持ちをわかってくれる人がいるというだけで。
パリ:「そうだ、なにも悪いことはしてないよな!」ってね。……つーか気づけば、前回に続いてまた銭湯の話してるな。
ナオ:本当ですね。銭湯と遠い場所の話もなきゃな。ブティック?
パリ: はは。
バカ美味しんぼ
パリ:この令和の時代になっても、駅前に普通にあるよな〜、ブティック。
ナオ:ありますね。洋品店というよりも、もう少し若い。大阪の福島にあるブティックで、店頭に「BEAT EMOTION」ってデカい字で書いてあるTシャツがあって、買いそうになったんだよな。
パリ:はは、たまに買いそうになる時ありますよね!
ナオ:あります。
パリ:これ、1周回ってかっこよくね? って。
ナオ:ただ、布地とかデザインがもう、ブティックなんですよ。
パリ:わはは! そうそう。
ナオ:首のまわりの感じとかが。着こなせるともちろんいいんでしょうけどね。
パリ:我々が着るとどうしてもおばさんっぽくなる未来が確定している。
パリッコの地元、大泉学園駅前のブティック
パリ:前も、地元のスーパーの2階ですっごい肌ざわりのいいパジャマを見つけて、女性ものみたいなんだけど、パジャマなんてそんなに複雑な形じゃないじゃないですか? 大きいサイズもあったので、いいなと。買ったんですよ。柄も水色と白のストライプみたいなシンプルな感じで。だけど帰って着てみたら、やっぱり完全にオネエなんですよね。すぐ妻にあげました。
ナオ:はは。なんだろう、たぶん全体のプロポーションなんでしょうね。
パリ:そうなんでしょうね〜。こんなノリに近かったかも。
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ナオ:あー、これはリボンがあるからなんとなく女性向けに作られたものなのかと思うけど、形自体はシンプルですもんね。
パリ:でしょ? っていうかあれ? よく見るとこれ、ただのひもですよ。
ナオ:あ、本当だ! 腰ひもか。ちょうちょ結びって、ほとんどリボンだな。
パリ:明らかにリボンに見えてました。
ナオ:そう考えると、いつも履いてる靴にもリボンがついてたんだ。もっとみんなの日常にリボンがあっていい気がしてきた。
パリ:リボン、たとえばキンミヤ焼酎の瓶の首のとこにかけといたら、毎晩ときめけるかも。
ナオ:そうですよね。酒にかわいい服を着せてあげる。そういう気持ちがもっとあってもいい。
パリ:うん。自分が酒だとしたら、倉庫で「ありがとう」と100万回聞かせられるより嬉しいですよ。
ナオ:確かに。
パリ:リボンを一晩かけたものとかけてないもの、味に違いが出るかも検証したいですね。
ナオ:ははは。いよいよそういう域ですね。
パリ:スピリチュアルとも違う、謎の。
ナオ:「気づきましたか? 昨晩からずっとリボンをかけてあったんです」
パリ:わはは。常連客がニヤリとしながら、「やっぱりか」とか言って。嫌な店だな〜。
ナオ:「で、なに作りましょう?」
パリ:何も作ってほしくないよ! バカ美味しんぼだ。
ナオ:美味しい理由が抽象的な美味しんぼね。どこどこ産だからとかじゃない。
パリ:最高。「気づきましたか? そのステーキ、懐で常温に戻しておいたんです」
ナオ:はは。
パリ:「肉? 西友のアメリカ産ステーキ肉ですよ」
ナオ:やばいなー。
パリ:読みたいな〜そんな漫画。
ナオ:「人肌で調理してありますんで!」
パリ:人肌調理、限界あるでしょ。人肌燗の意味も履き違えてて。
ナオ:本当に抱いてるっていう
パリ:一升瓶を抱いて一晩寝て。
ナオ:「ほうれん草のおひたしを胸元で大事にしたものです」
パリ:はは! 胸元で大事にしたもの、もうわからない。
ナオ:おひたし自体は西友のものでね。
パリ:仕入れは全部西友。「バカ美味しんぼ」じゃあんまりだから、タイトルをつけてやらないとですね。
ナオ:そうですね。
パリ:「あったか酒場物語」とか? いや、それじゃ伝わらないな。
ナオ:「人のぬくもり」っていうのが、そういう表現じゃなくて、物理的な温度であるというのをうまくね。
パリ:あ! 「将太の寿司」みたいに、「健太のぬくもり」とかは?
ナオ:ははは。その部分にぬくもりが入ってくるんだ。
パリ:これならジャンルも「ぬくもり漫画」だと一目瞭然でしょう。
ナオ:諸国のグルメをぬくもりーゼして食べていくような。
パリ:はは。健太の必殺技。諸国漫遊編見たいですね! 主人公の名前は「抜森健太」でどうですか?
ナオ:ぬくもりけんた、か。いいですね。
パリ:駅前の老夫婦がやってる人気食堂に乗りこんでいって、常連客たちに向かって「あんたたちはなにもわかってない! おれが本当のぬくもりを食べさせてやりますよ!」。
ナオ:ははは。すごい図々しさ。すでにぬくもりがある場所に乗りこむっていう。
パリ:空気読めないからね。っていうかもう、悪者ですよねそんなやつ。ぬくもり対決迷惑男。
ナオ:そもそも、ぬくもりを自ら売りにしてくるやつとかちょっと警戒したほうがいいですもんね。
パリ:本当です。ぬくもりってのは、こっち側で感じるもんなんだよ!
ナオ:ましてや健太のとりえは、ぬくもりしかないんだもんな。仕入れは西友だし。
パリ:健太、よく店出せたな。最初はまっとうな店だったのかもしれませんね。
ナオ:そうか。健太もまた被害者なのかも。みんな点数つけられちゃう時代でしょ、食べログなんかで。
パリ:はいはい。
ナオ:ああいうのに嫌気がさしてぬくもりの方向に。わかる気もする。
パリ:「味は及第点だが人手が足りないのか料理が冷めていることが多い。減点」みたいなこと書かれてね。それで客足が減って、「ぬくもってればいいんだろ!」っていう。
ナオ:「電子レンジより胸元だろ!」
パリ:ははは。電子レンジのこと「偽ぬくもり機」って呼んでそう。
ナオ:健太、ゆっくり休んでほしい。
パリ:あったかいふとんで、たまには食材を抱かずに。
ナオ:久々に実家でも帰ってね。
パリ:親のぬくもりを感じながらしばらくのんびりしたら、きっと回復するよ、健太。




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